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2006年11月29日 (水)

浮世絵って、おもしろい!

伊勢屋主人です。

秋も終盤、そろそろ冬到来の時節ですが、今年最後の「芸術の秋」イベントを楽しもうと、先日 四日市市立博物館で開催されている『浮世絵に描かれた四日市』を見てまいりました。

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私は今まで浮世絵をじっくりと見たことはなかったので、どんな作品が展示されているのか、期待していきましたよ。

会場に入ると、正面にど~んと大きな屏風が! 
しかも、ガラスケースの中ではなく、そのままに展示されています。これには、少し驚きました。

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思うにこれは、当時のままの状態でこの屏風を見て欲しいという、博物館の配慮ではないのかな。
でも、なかなかに大胆ですね~ (^^;
屏風は、東海道と伊勢参宮街道の宿場を描いたもので、当時の町並や交通の様子が活き活きと描かれていて、とても楽しく拝見しました。

さて、今回の企画展は「描かれた四日市」がテーマということですが、展示を拝見しますと浮世絵がかなりマーケティング的色彩を持って作られていたことが、私には面白く感じられました。

例えば「四日市」という対象を描くにしても、その詳細な写生というのではなく、当時の人々(=市場)の脳裏に描かれた特徴的な部分をモチーフにしている浮世絵が多いのです。
これは、有名な歌川広重の『東海道五十三次』の四日市です。
描かれている川は現在の三滝川だそうですが、この橋と、風で飛ばされた笠を追いかける旅人の構図は有名ですね。

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水平線で奥行きを持たせた画面の中央を、水平な橋と斜めの道という直線で断ち割り、その中の点景として風に合羽をはためかせながらも静的な旅人と、笠を飛ばされて追いかける動的な旅人、という対照的な動きを配した、斬新なデザインと思います。

この広重の『東海道五十三次』以前の浮世絵においては、四日市を描く題材として追分の大鳥居やその周囲の饅頭屋などが多く取り上げられていた、ということです。
つまり、こういった風景上の特徴が、当時の浮世絵の顧客である江戸っ子が四日市に対して持つイメージとして明確であったために、四日市を象徴する「記号」として大鳥居とか饅頭屋がフューチャーされたわけですね。

しかし、先行者と同じ特徴をモチーフとしたとすると、自作の大幅な売上げ増は見込めない、と広重は判断したのでしょう。それまでにない、まったく新しい四日市像 = 橋と風 を世に提案した、というのがこの浮世絵なのですね。
そして、広重のしかけたイメージ転換は見事にあたり、『東海道五十三次』の成功とともに、四日市のイメージを転換することに成功したのです。

Ukiyoe004_1

こちらは、歌川広重より少し後に活躍した、歌川貞広が描いた四日市です。
作品を構成する要素は広重と同じく、橋と風です。ただ、それを眺める角度が異なるのと、さらに風に抗して歩く旅人二人を配して、強風の感じを強くしています。
貞広が活躍した時期には、江戸での「四日市」のイメージが、完全に橋と風になっていたのでしょう。
そして、貞広も広重が確立した四日市のイメージを踏襲することで、自作の安定した販売を狙ったように思われます。
現代のマーケティング戦略と同じように、江戸時代にも浮世絵作者や版元は、様々に販売戦略を練っていたのでしょうね。

ところで、当時の四日市を象徴するものとして蜃気楼を描いた浮世絵も多く、この題材は明治期まで引き継がれて描かれたようです。江戸時代には、蜃気楼が見える場所として、四日市はよほど喧伝されたと見えます。
さらに、その蜃気楼の描写についても、見聞をもとに描いたものと、実際にそれを見て描いたものと、それぞれの描き方に相違があるとのことで、こちらも興味深いものでありました。

まあ、私はかようなことを思いつつ今回の浮世絵を楽しんだわけですが、さらりと当時の様子をしのんで楽しむという点も、今回の浮世絵はなかなか見ごたえがあると思いました。
絵画一般、浮世絵、江戸時代の風俗などに関心をお持ちの方ならとても楽しめる企画展ですので、ぜひお運びください。

四日市市立博物館 『浮世絵に描かれた四日市』は、12月10日まで開催されています。

【四日市市立博物館】
三重県四日市市安島一丁目3番16号
でんわ:059-355-2700
ホームページ:http://www.city.yokkaichi.mie.jp/museum/

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