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2006年6月27日 (火)

農業製品としての酒 ~ 清水醸造(株)訪問記 - その参

伊勢屋主人です。

今日は、鈴鹿の清水醸造さんの杜氏 内山智広さんに、お話を伺います。

内山さんは、30代前半の若々しい杜氏さんです。杜氏さんって、気難しそうな方というイメージを持っている主人にとって、内山さんはとても気さくで話を伺いやすい方でした(*^-^*)
でも、若い方で杜氏を目指すって、珍しい例ではないでしょうか。いきなりで失礼ですが、そんなお話からスタートしました。

「学校でバイオテクノロジーの勉強をしたのですが、その時の先生に日本酒は面白いぞ、と言われまして。その言葉が記憶に残っていて、この道に入ったのですが、社長にはまだまだ勉強途上なんだから、いろいろとチャレンジしろ! とハッパをかけられています(笑)」

日本酒作りの、どういう点が面白いんでしょう?

「もうかなりの回数仕込みを経験したのですが、ひとつとして同じ酒が出来ない、というところです」

え? では、毎回仕込みのたびに、味が変わるということですか?

「もちろん、毎回毎回まったく違った酒になる、という意味ではありません。
経験上、この米を使って、この系統の麹と酵母でこれくらいの温度で作っていけば、こんな感じの味になる、というのはわかっています。
でも、最後の最後のところで、酒の味は微妙に変わるんです。出来上がった酒を味見して、ああ、こうすればよかったのかな、次はこうしてみようかなって、工夫を考えなければならない部分が必ずあるんです。どこまでいっても、工夫の余地がある、というのが仕事としての面白みですね」

もう少し、詳しく教えていただけますか? まだ、正直イメージがつかめていません(^^;

「ご存知と思いますが、日本酒ができるまでには、2つの過程があります。
一つ目は、お米の澱粉が麹菌より分解され、ブドウ糖が作られる過程、これを糖化と呼んでいます。
二つ目はこのブドウ糖を酵母が食べる過程で、これが醗酵です。酵母がブドウ糖を食べるときに、アルコールと二酸化炭素が生成して、酒になっていくんです。
私の仕事は、糖化と醗酵がうまくいくように環境を整えることなんです。人間は、環境を整えることはできるのですが、その環境の中でどのように糖化と醗酵が進むかはコントロールは出来ないんです」

では、日本酒の味は、麹菌と酵母の働きに委ねられるわけですね。

「最終的な味の決定は、そうです。言ってみれば、酵母の気分次第なんです(笑)。
同じ系統の酵母を使ったとしても、その酵母の気分が違うのですから、同じ味の酒にはならない。面白いし、厄介だし、楽しいですね
だからこそ、環境を整えることには、いちばん気を遣いますし、こだわる部分です。中でもいちばん大事なのは、麹つくりの部分です。
酒米に水を含ませる程度や蒸し具合、麹菌を酒米にふりかけた後の米内部への菌糸の浸透具合、これは全部手で触りながら判断しています。手の感覚やにおい、目で見ての確認などで判断していくしかないんです」

杜氏としては、麹菌や酵母を思いのままにコントロールしたい、という思いにはなりませんか?

「私たちは、工業製品を作っているのではないですから。
工業製品でしたら、すべて規格に合わせて作らなければいけないのでしょうが、日本酒って農業製品なんだと思っています。
どんなにきっちり環境を整えたつもりでも、最後は酵母の気分ってことは、その年の日照や雨の降る量に出来が左右される農業に近いなあ、と。
それと、それぞれの仕込みに注いだ努力が、素直に出来に反映されるのも農業っぽいし、楽しみの部分です。そして、酵母の気分によってできた尖がった部分がウチの会社の酒の特徴ですし、それがウチの酒の魅力なんです。
大手の日本酒メーカーさんは、不特定多数のお客さんの好みを満足させるために、尖がったところのない、誰にでも受け入れられる一定の品質のお酒を作られますが、これは工業製品ですよね」

なるほど、そういう意味で常に工夫を考える部分が存在しているのですね。興味深いお話です。

「毎日、毎年がチャレンジの連続です。そして、自分たちがうまいと思う酒を、自己主張して作っているのですから、楽しいです。
で、それを飲んでくださったお客さんがうまいね!って言ってくれた時は、いちばん嬉しいですよ(笑)」

う~ん、納得!

「でも、仕込んだタンクは、全部うまい酒になって欲しいです、正直。こちらが思うような酒になってくれ、と神様にお祈りする気分ですわ」

そういえば、タンクの温度管理の機械なのでしょうか、制御盤の上に、恵比寿さんと大黒さんが鎮座されていました(^^)

素人の主人にも、酒造りの奥深さと楽しさ、杜氏の喜びが少しはわかったような気になりました。
内山さん、お忙しい中いろいろとご説明いただき、ありがとうございました。

Ebisudaikoku

次回は、もう一度 清水社長にお話を伺います。お楽しみに!

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